なぜSEO会社はオウンドメディア構築や運用代行を引き受け、自前で運営しないのか?費用と収益の話

公開日: : オウンドメディア

   
 
   

オウンドメディアの運用収益

半年前くらいから書きたいなと思いつつ、だいぶ時間が経過してしまいました。
今回のお話は、次のような質問への答えになるかなと思います。
「メディア運営を成功させるのが仕事なら、自社でやったほうが良いのでは?」
「構築を引き受けるより、メディアを育ててサイト売却したほうが儲かるのでは?」

これらの私なりの答えをまとめていこうと思います。
弊社に限らず多くのSEO会社やオウンドメディア構築代行会社は似通った考えをお持ちだと思います。

オウンドメディアの構築は高い割合で成功させることが出来る?

オウンドメディアを運営し、一定規模にまで育て上げることはさほど難しいことではありません。
数百万~数千万PVのメディアに育て上げるとなれば、それなりに難易度も上がりますが、B2B事業者向けのオウンドメディアやテーマを絞り込んだメディアであれば、費用と時間さえ掛ければ大方成功ラインに乗せることは出来ます。

成功の定義が曖昧なため、暫定的に本記事で考える成功の基準について少し触れたいと思います。
(PV主義を否定する企業さんもいますが、ここでは本題からそれるため、イメージしやすいPVの話が中心です。)

成功の定義

一般的なオウンドメディアは、SEO目的での構築か見込み顧客との接点を増やす目的で構築されることが多いでしょう。
B2Bサイトであれば、ミドルキーワードでの上位表示と見込み顧客へのブランド刷り込み、見込み顧客のリスト取得がメインの目的となるでしょう。
この場合、サイト規模はさほど大きくなく数百記事程度の規模感で、企画から安定成長に乗るまでの期間も半年から1年程度が多くなります。
PV数をKPIに置く場合、月間10万PV~数十万PVが一つのゴールになるかと思います。

次にB2Cサイトの場合です。
ビッグキーワードでの上位表示を目的にオウンドメディアを展開する場合、難易度は高くなります。
このため、多くのクライアントは潜在顧客へのアプローチを目的にオウンドメディア構築を選択します。
B2Cでもリーチを測る目安としてKPIにPV数を置く場合があります。目安として50万PV~100万PV程度がご希望として多いように感じます。

オウンドメディアの構築の流れと費用

なんとなく成功と呼べるオウンドメディアがイメージ出来たところで、成功ポイントへ到達までの大まかな流れと費用感を見ていきましょう。

流れ

構築の流れは、B2CでもB2Bでも概ね同じです。

  1. ターゲットと目的を決める
  2. キーワードプランニング&インテントプランニング
  3. 予定サイトマップの作成
  4. レギュレーション作成
  5. ライティング&編集
  6. 公開
  7. 効果測定

スタート時点で、先1年ほどの長期計画を立てる場合もあれば、3ヶ月間ほどの短期計画のみで走り出す場合もあります。
短期間の計画のみで構築を開始する場合、一定期間毎に上掲2(キーワードプランニング)から7(効果測定)を繰り返す形となります。
長期計画を立てた場合であっても、リリースしたコンテンツのGoogle評価により、再編集や作りなおしを行う場合があります。

またオウンドメディアは、半年から1年程度でメンテナンスを計画する必要が出てきます。
情報そのものが古くなったり、より良いアイデアがある場合など、コンテンツの改修を実施します。
(税務サイトであれば、法令の改正にあわせての改修。コピー機リースサイトであれば、新製品発売にあわせて改修などをイメージして下さい。)

言葉の補足説明

・ターゲット:誰が見込み顧客なのかを考える事です。出来るだけ具体的に想像することが大切です。法人相手のビジネスであれば、会社の規模や担当者の部署、どのくらい困っているか、予算・検討期間などもあわせて考えられると良いでしょう。
・目的:あなたはなぜオウンドメディアを作るのか、これが目的です。
・キーワードプランニング:検索エンジン上で上位表示を狙うキーワードを考えること。
・インテントプランニング:どのような検索意図をもってユーザーに照準をしぼるか、どのような課題や問題を持ったユーザーに照準を合わせるか。
・予定サイトマップ:完成した際のサイト構造、URL構造が論理的に説明できる形になるよう事前に型を作ります。
・レギュレーション:どの記事を取り上げても、一定水準の品質を保てるようにルールを作ります。また統一感を出すためのルールも作ります。
・効果測定:順位の測定やトラフィックの推移、問い合わせや成約数の測定も含みます。重要なページのトラフィックに重み付けをするなど、評価に味付けをする場合もあります。

費用

大体の構築の流れが分かったところで、お金の話をしましょう。
ここでは例として、さほど大きくない200記事程度のメディアを立ち上げる場合を例にし、ご説明します。

費用は大きく分け、5つの要素で構成されます。

  1. プランニング費用
  2. ライティング費用
  3. 編集費用
  4. サイト構築、運用費用
  5. 効果測定費用

では、200記事を作成する場合の具体的な費用例を見ていきましょう。

プランニング費用

先の流れで言う、1~4項に該当する作業です。
200記事程度の規模の場合、スムーズに進んで40~60時間程度の作業ボリュームかと思います。
SEOにおけるキーワードや検索意図、サイト構造の最適化が理解できている正社員スタッフが行ったとして、人件費で20万~30万円程度を見込むと現実的でしょう。
外注となると幅が広いですが、40万~100万円程度が相場になるでしょう。

ライティング費用

次に実際の記事を書いていく工程です。
ノープランに書き進めると、検索意図を満たさない記事が出来上がる場合が多く、事前に記事の構成を準備する必要があります。
こちらも社内で内製する場合の想定で、1記事(3000文字程度)あたり構成に1時間、原稿作成に3時間を割り当て、200記事で800時間程度(人件費で400万円程度)となります。

外注で進める場合、記事構成を1記事あたり8,000円、ライティングを12,000円とし、200記事で400万程度となります。
ここでの例では3000文字程度の記事ボリュームを想定しています。当たり前ですが、文字数が少ない想定にすればコストは下がりますし、増えるとコストも増加します。

編集費用

続いて編集費用です。
ここでの編集とは、検索意図を満たしたコンテンツとなっているかの確認と誤字脱字のチェックを含めたレギュレーションとの合致を確認します。
しっかりとしたプランニングとレギュレーション作成が出来ており、ライティングスキルに問題のないスタッフにより作成された原稿であれば、1記事30分程度で計算できます。
200記事を内製して50万円程度が想定費用です。
ライティングを外注の場合、多くのサービスで編集まで完了した状態で納品されるため、社内での最終チェックは1記事10分程度とし、15万~20万円を見込みます。

サイト構築、運用費用

オープンソースのCMSを用いて、デザイン制作とコーディングを実施します。
コストを掛けずに構築しようとすれば、10万円程度で用意することも可能です。
一般的な工程を踏む場合であれば、30万~50万円の費用感です。
大手の広告代理店さんですと、桁が一つ上がるような見積もりになるかと思いますが、ここでは出来るだけ安価に進めた前提でお話を続けます。

加えて、サーバーやドメインの費用が運用中必要となります。
数十万PVの規模であれば、安価なサーバーでも問題はないため、月に1万円ほど見ておけば良いでしょう。

編集まで済んだ原稿を実際に公開できるページにしていく必要があります。
CMSであれば、1記事10分~30分ほどでリリース出来るかと思います。
内製の場合で20万~40万円を見込みます。
外注でも同等程度での依頼が可能です。

効果測定費用

順位の測定は、順位測定系のクラウドサービスを用いたとして、月に3万円ほどを計上します。
PVはGoogle Analyticsなどの無償ツールで測定するものとし、月に一度効果測定結果をレポーティングします。
レポート用意を内製して、数万円程度。
外注でも5~10万円程度を見込みます。

費用の総額

ここまで各項を細かくご説明してきました。
外注の場合の必要をかなり安価に抑えたケースで計算しているため、自社でご利用になっているサービスよりも安く見える方もいるかと思います。
ここまでの各費用を合計すると、次のとおりです。
内製合計:520万~570万円+月5万~8万円
外注合計:510万~610万円+月6万~12万円

内製化した場合の人件費の計算が、年収600~700万程度のスタッフで社保福利厚生・オフィスコストを載せた程度で算出しているため、上下あれば実情に合わせイメージして下さい。

自前で運営はしないのか?

そろそろ今回のテーマの核心に近付けていきましょう。
この「自前で運営はしないのか?」の答えは、
「自前でも運営しています」です。

弊社でも現状、十数サイトを自社で運営しています。
立ち上げたばかりで、月間数千PVしかないメディアもありますし、立ち上げが一段落し安定的に数十万PVを得ているメディアもあります。
SEOを考える上での実験サイトを兼ねているとも言えますが、多くはクリック広告での収益のみでさほどインパクトのある収益にはなっていません。

結論:自社でもやるが、代行業務を引き受けたい理由がある

社内リソースに余裕があれば、自前のメディアを立ち上げることがあります。
ただ、純広告の営業を行わなければ、1PVあたりの収益は0.4円ほどのため、100万PVで40万ほどの粗利計算です。(弊社運営サイトでのおおよその目安)

前述した通り、メディア構築の体制が整った状態であってもオウンドメディア構築への初期投資回収に約10ヶ月~18ヶ月ほど掛かります。
このため無制限にオウンドメディアを立ち上げれば、どこかで資本が枯渇するわけで、収益とのバランスを取りつつ進める必要があります。

対して、オウンドメディアの立ち上げを外注頂く場合には、納品しキャッシュとなります。
更には広告収入の季節要因やリスクにさらされないメリットがあるわけです。

以上のことから、原則代行業務を引き受けたい。でも人的リソースが余っているタイミングでは自前メディアを作っていく。
という考えに至ります。

かなりコンテンツマーケ会社やSEO会社の内情的な記事になりました。
恐らく、ここまで読んで頂いた方の多くは、「では、オウンドメディアを作ってもさほど効果は期待できない?」と感じられたかもしれません。
それは誤りです。

オウンドメディアを作る企業の最終目的は、自社サービスの販売です。
つまり、クリック広告による収益よりも収益性が格段に良いため、上掲の収益計算は当てはまりません。
言い換えれば、クリック広告による収益を目的にしたメディア構築を丸投げ外注した場合には、相当厳しいと言えるでしょう。

ブログ更新の時間が取れずにいますが、定期的にオウンドメディア関連記事をあげていきたいと思っています。

 

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